仏蘭西風洋菓子レ・トゥールソル
シェフ 山田辰巳様

藤枝市大洲中学校の真向かいにある人気のケーキ屋さん「仏蘭西風洋菓子 レ・トゥールソル様」おいしい洋菓子がおとずれる皆さんを笑顔にしています。
シェフの山田辰巳さんと、接客と経理を担当している奥様に、酒井同席でお話をうかがいました。

※インタビュアーは酒井文人税理士事務所のお客様でもある山内真一さんです。


(1)職人としての自信だけで開店。でもお金の管理がわからない。

(1)職人としての自信だけで開店。でもお金の管理がわからない。

-こんにちは。よろしくお願いします。

(山田シェフ)
こんにちは。よろしくお願いします。

-「レ・トゥールソル」とはどのような意味なのですか。

(山田シェフ)
フランス語で「ひまわり」という意味です。

-「ひまわり」。。店内も「ひまわり」がたくさん飾ってありますね。お店の歴史について教えてください。

(山田シェフ)
2001年(平成13年)に開業し約10年たちました。県内外の店で学び、ご縁がありまして藤枝市大洲にレ・トゥールソルを開店しました。

-お店を出すというのは勇気がいることだと思います。

(山田シェフ)
僕の場合は、経営者という感覚は一切なく、ただ単に職人としての自信だけで独立したようなものですね。
「良いものを作っていれば売れる」という時代の中で修業をしていましたので、経営に対する不安よりも職人としての自信の方が大きく「絶対!店はうまくいくはず!」という自信がありました。
ものすごい”変な自信”ですけれど(笑)

-素晴らしい(笑)お店を出すと、毎日の現金の管理や、請求書の作り方、支払いの時期など、お金に関する仕事がたくさんでてくると思います。開店当初はどのようにしていたのですか。

(山田シェフ)
僕は全くノータッチ。全て妻がやっていました。

(奥様)
銀行に勤めていたので銀行の借り入れや返済については処理できましたが、経理経験が全くなかったので「どうしよう?!」と悩むばかりでした。店を始めた頃は税理士にお願いしていませんでしたが、3ヶ月で「お手上げ!」になってしまい、主人が知っている税理士にお願いすることになりました。
書類も全て手書きだったのですが、教えていただきながら何とか日々のお金の処理だけは出来るようになりました。

-大変でしたね。

(奥様)
もう少し自分で出来るようになりたかったので、経理担当者養成講座に1年間・週に1~2回通いました。終了証書までいただきましたが、いざ実践しようと思っても何をしていいかわかりませんでした。
そのため、その後も税理士の指導通りに処理していました。

(山田シェフ)
僕も商業高校に行って簿記をやっていました。でも、実際は勘定科目を借方と貸方に振り分けても、どのくらい稼いでいて、仕入れたお金がどのくらいで、儲かっているのか赤字なのかもわからなかったです。

-無我夢中で走り続けるような毎日だったのでしょうか。

(山田シェフ)
そうですね。
お店も始めたばかりで子どももいます。とにかく職人としての自信だけはありましたので「お客様が増えていけば大丈夫だろう」と考えていました。とにかく売上を伸ばすことが目標でした。

(2)売上が伸びたのにお金がない。夫婦喧嘩ばかり。

(2)売上が伸びたのにお金がない。夫婦喧嘩ばかり。

-お金の処理が出来るようになって好転の兆しはありましたか。

(山田シェフ)
それが一向にありませんでした。
税理士から連絡帳が送られてきて記入して返すと、月次決算が3~4ヶ月後ぐらいに郵送で送られてきます。ただ、僕はそれを見ても、売上がいくらあった、純益いくらぐらいしかわからないのですね。しかも、3~4ヶ月前の結果で「利益が出てないから頑張れよ」と言われても何も出来ないわけですよね。
「お店を経営するというのは、こういうことなのだろうか?」と疑問に思っていました。

-奥様はどのように感じていましたか。

(奥様)
開店して2年程は売上が伸びなかったのですが、3年目ぐらいから忙しくなってきました。

-おお!人気が出ると売上が伸びるのも早いですよね。

(奥様)
私の耳にもお店の評判が良いという話が入って来て、テレビ局の取材も来て、お店が一人歩きしてるような感じもありました。
一方では、人を雇わなくてはいけなくなるので人件費はいくらまで使っていい状況なのか、私たちの生活費はどのくらい使っていいのか、消費税はどうやって貯めていけばいいのか等、わからないことが雪だるま式に増えていきました。

-売上が伸びるのは幸せになっていくと誰もが思うのですが。

(奥様)
それが少しも幸せにならなかったです。
消費税を払わなくてはいけないのに、なぜか払えないのです。

(山田シェフ)
当時は「売上が伸びる=認知されていくことですから、それが職人としての私の評価」だと考えていました。
売上が伸びて認知されているのに、経理を担当している妻が「お金がない。今月の支払いをどうしよう?」と言ってくることが理解できませんでした。妻に「どんどん売れているのに、なんでお金がないの?」と酷いことを言ってしまうこともありました。

-売上という指標だけでみると、何故?と疑問になってしまう。

(山田シェフ)
本当にその通りです。

(奥様)
パートさんを雇えない状況のために、朝から晩まで土日もなく、子どもをおんぶしながら働いているのに、主人に怒られるし、生活が苦しいし「こんなお店やらなきゃよかった」と思うぐらい、喧嘩ばかりしていました。
その頃に、酒井さんと出会ったのです。

(山田シェフ)
酒井さんと出会ったのは転機でしたね。
会計がきちんと出来るようになるまで、妻と喧嘩ばかりでした。

(3)毎月の数字の意味を理解し、数字を深く考え、利益があがる体質へ

(3)毎月の数字の意味を理解し、数字を深く考え、利益があがる体質へ

-売上は伸びているのに支払いが大変で喧嘩ばかり。その時に酒井さんと知り合ったわけですね。

(山田シェフ)
店の経営がお話したような状況ですから、相談できる税理士を探していました。
2005年に静岡市で行われた勉強会でご一緒させていただき、お話して興味を持ちました。

-酒井さんに興味を持った理由は何でしょうか。

(山田シェフ)
いつお会いしても、このままの人柄で、心に持ってるものが熱いですし、自分の理論を持っていますね。
職人的な心で通じ合う部分がありました。

-職人的な心。

(山田シェフ)
仕事をお願いするなら、プロフェッショナルな人がいいなと思っていました。
あと、酒井さんのご実家が和菓子屋さんというのもご縁を感じました。

-え?そうなのですか?

(酒井)
実は、実家が父で4代目の和洋菓子屋なのです。
私が子どもの頃の両親の姿と、山田さんご夫妻の姿が重なることがありまして、特別なご縁を感じました。おかげさまで、とても親しくさせていただいてご家庭にまで上がらせていただくのですが、そのたびに小さかった頃を思い出します。

-酒井さんにお仕事をお願いする決め手となった理由は何ですか。

(山田シェフ)
初めて、酒井さんに僕たちの内情をお話した時に、すごく叱ってくれたことですね。
自分がいかにお金にだらしなくて、甘えていたことを痛感しました。
”なぁなぁ”の関係でなく、愛情を持って叱ってくれたことが衝撃的で、お任せしたいなと思いました。

-それで実際の業務が始まったわけですね。

(山田シェフ)
毎月毎月、細かな数字の状況や意味を教えてくれるところから始まりました。
経営者として抑えておくポイントが何で、何も見て、どうやって利益を出すのかということを初めて知ることが出来たのです。
そこから”経営者チック”(笑)のようなことが始まりました。

-お客様が増えて売上も伸びたのに、お金に困っている理由は何でしたか。

(山田シェフ)
まず、無駄遣いがいっぱいありました。お店の装飾、使ってみたい食材等、何でも欲しければ買っていました。私のお金の使い方はすごく変わりました。

(4)私たちのお店のスタイルを崩さないで、視野の広い考え方が出来る

(4)私たちのお店のスタイルを崩さないで、視野の広い考え方が出来る

-奥様が酒井さんについて印象に残っていることは何でしょうか。

(奥様)
一番驚いたのは「現実を受け止めましょう」という言葉でした。
働いても働いても利益がでないことに不安が一杯でした。
酒井さんに「実際のお金はこうなっていますよ」と説明された時に、目をそむけたくなるような現実がありました。でも、目の前にあるのは現実で、見ないようにしてきただけなのですね。 「現実を受け止めましょう」と言われたときに、親から叱られた感じがしました。叱ってくれる人がいることは幸せなことですよね。

-頑張りましたね。

(奥様)
私は、酒井さんに「今からでも間に合いますか?」と聞きました。そうしたら「十分、間に合います」と自信をもってお答えいただいたのです。
ですから「今まで無駄にしたお金はしょうがない。誰でも失敗はある。」と自分に言い聞かせて「ゼロから頑張ろう」と思いました。最初はつらかったのですが、酒井さんから前向きな提案や指導をしていただいので頑張れました。

-酒井さんは「お店をやるというのは、お客様を喜ばせるのはもちろん、お店をやっている人たちも幸せでなければいけない」というお考えをお持ちです。酒井さんとのお仕事で、奥様の中で増えた幸せは何ですか。

(奥様)
安心感ですね。
親のような気持ちで私たちのことを見ていてくださる人がいるのだという安心感です。
お金のやりくりのことも、銀行の借入や返済、お金についてどうしよう?と自分たちで悩んで苦しむことがなくなりました。もちろん、決めるのは私たちですが、専門的な第三者の目で、しかも私たちの立場にたった考え方でのアドバイスが本当に嬉しいです。
私たちのお店のスタイルを崩さないで、視野の広い考え方が出来るようになりました。
夜もぐっすり眠ることができるようになりました。

(山田シェフ)
月末の支払いの苦労がなくなったよね。
月末もドンと来いって感じです(笑)

(奥様)
おかげさまで夫婦喧嘩もなくなりました(笑)

(5)お客様の期待に応えていくために、しっかりと利益を出すことも大切

(5)お客様の期待に応えていくために、しっかりと利益を出すことも大切

-開店当初の山田シェフには、経営者的な目線が全くなかったとのことでした。一番ご自身に足りなかったことは何だとお考えですか。

(山田シェフ)
お金に全くといっていいほど興味を持っていなかったことです。

-知識以前に興味がなかった。

(山田シェフ)
はい。
正直に言うと、材料の値段は後からついてくるという考えだったのですね。「この材料いいね。このチョコレートおいしいね。」で仕入れた後に「え!結構高いね。」というのがたくさんありました。
今はそういうことはなくなりましたが、経営者である僕が出すぎて原価計算ばかりしていてもいけませんよね。そのバランスをとるのは難しいですね。
-酒井さんは「笑顔で愉しく経営をしていただくために税理士として最良のサービスを提供したい」と考えているそうです。おふたりにとってお店をやっていく喜びは何ですか。

(山田シェフ)
お客様がニコニコと笑顔で店におみえになることが一番の幸せですね。
そして、お店に携わってくださる全ての方々に感謝できることです。お客様も、従業員も、材料問屋さんも、もちろん酒井さんも、すごく有難い方ばかりです。感謝し続けられることが、自分のやる気につながっているように思います。
以前は売上が悪い日には「これしか売れない」と思ったのですが、今は悪くても「こんなに買ってもらった」という気持ちになります。

(奥様)
4人の子どもたちがお父さんが作ったケーキを「おいしい!」と食べてくれて、子どものお友達、中学校・小学校・幼稚園・保育園の先生、地域の皆さんからの「おいしいよ」という言葉が一番うれしいです。
売上ももちろん大事です。でも「レ・トゥールソルのケーキが好き」「また行くね」という言葉をかけてくれると頑張ろうと思います。

(山田シェフ)
何か、すごくキレイ事を言っているように聞こえるかもしれませんが、本当にそう思いますね。

(奥様)
本当は私たちが「買っていただいてありがとうございます」なのに、地域の方が「ありがとう!」っておっしゃってくださるのです。
皆さんの期待に応えて、笑顔になっていただけるように頑張りたいです。そのためには店を続けなければなりませんから、しっかりと利益を出すこと大切ですし、私たちも笑顔でいたいです。

(6)経営者としての私を叱ってくれる大きな存在

(6)経営者としての私を叱ってくれる大きな存在

-おふたりにとって、酒井さんはどのような存在ですか。

(山田シェフ)
僕の中で一番強いのは「叱ってくれる存在」です。
職人としての僕を叱ってくれる方々はいますが、経営者として僕を叱ってくれるのは酒井さんですね。

-山田シェフのことをよく理解しているが故に叱ることもあるのでしょうか。

(山田シェフ)
はい。
ですから、すごくつらい仕事をしてもらっていると思います。
メールの端々でも感じたり、先日、わざわざ来てくれた時にも感じます。

-奥様はいかがでしょうか。

(奥様)
本当に親みたいな存在です。仕事をする部分では、親以上に私のいろいろな性格をみていると思うので、もう逃げようがない感じです(笑)逃げも隠れもできず、隠し事もできなくて、褒めてもくれるし、叱ってもくれるし、励ましてもくれる大きい存在です。
これからもずっとお世話になっていきたいなと思っています。愛想をつかされないようにして(笑)

(酒井)
こちらこそ、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。本当にありがたいです。

-今日はお忙しい中、ありがとうございました。

(山田シェフ)
こちらこそ、ありがとうございました。

(奥様)
ありがとうございました。