実例紹介

遺産総額7千万円のAさんの場合

下表は平成27年1月1日以降の改正後の相続税額です。
相続人が3人で遺産が7,000万円なら、相続税は約220万円、となります。
平成27年の相続税改正により、相続税の基礎控除額が引き下げられました。亡くなった方が残した財産が基礎控除額を超えると相続税の申告義務が生じます。
基礎控除額は「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」で計算されます。
お父さん・お母さん・子供2人の家族だとしたら、お父さんが亡くなった時、相続人はお母さんと子供2人の3人となるので、基礎控除額は「3000万円+(3人×600万円)」=4,800万円となります。
お父さんが7千万円の財産を残したので相続税の申告義務が生じます。
しかし、この表は相続税の特例を使う前の額です。
小規模宅地の特例が使えれば、この家庭の相続税は0円になります。その理由をご説明します。

小規模宅地の特例に該当すれば自宅の敷地は100坪(330㎡)まで評価額が8割減になります。

8割減ですから、2割だけが相続税の課税対象になります。
相続税の課税対象財産は、自宅の敷地:2800万円×20%=560万円
自宅の敷地以外:4200万円
合計:4,760万円 となり、基礎控除額を下回るので相続税はかかりません。
残した預金が1千万円多くても、相続税は96万円です。
また、配偶者が相続した財産は1億6千万円まで非課税です。
このように、普通の家庭の方には相続税は恐れるものではありません。

ヘタにリスクを背負って相続税対策をするよりも相続税を支払った方が安く済むことになります。
まず、現状を把握して、為すべき相続税対策を打ってください。
「何もしない」という選択肢が有力な事も知っておいてください。

遺産総額6千万円のBさんの場合

遺産の内容

自宅敷地:3,000万円(80坪)
自宅建物:500万円
現預金:2500万円
生命保険金:なし

家族構成

配偶者と子ども3人。亡くなった方と配偶者と子ども1人が同居。子ども2人は別に居を構えている。

遺産分割

協議の結果、自宅を同居の子ども、現預金を配偶者が相続する事に決定。

支払う相続税

配偶者:0円
同居の子ども:0円
合計:0円

弊社への報酬

410,000円(遺産分割協議書作成報酬込)

円滑に進めるために気を付けたポイント

お会いした時は分割案が決まっていない状態でした。
遺産分割で注意する事は、と問われましたので、「円満相続と配偶者の生活を最優先に考えて下さい」と回答致しました。
遺産内容を御連絡頂いた後、「自宅を配偶者か同居の子どもが相続すれば相続税はかからないので相続税の事は心配しないでください」、とお伝えしました。
いわゆる二次相続、後に続くであろう配偶者の相続時の事も心配されておられましたが、配偶者は財産を持っていないので、二次相続も相続税はかからない事もお伝えしました。
相続税節税を図ったり気にする事で遺産分割が歪んではいけないと考え、概算相続税額を迅速にお伝えするよう心がけました。
結果、「円満相続と配偶者の生活保障」が実現できる分割となりました。

遺産総額1億3千万円のCさんの場合

遺産の内容

自宅敷地:3000万円(100坪)
自宅建物:500万円
現預金:3,000万円
上場株式:2000万円
田畑:4500万円

家族構成

配偶者と子ども3人。亡くなった方と配偶者と子ども1人が同居。子ども2人は別に居を構えている。

遺産分割

配偶者は70代前半なので、今後の生活資金を確保を最優先に考えた。
また、配偶者が自宅は息子に譲り、田畑は自分が持っていたいという希望があるので、それを最優先に。
協議の結果、自宅は同居の息子が相続し、他の全て、現預金、上場株式、田畑は配偶者が相続する事に決定。

配偶者の相続時の考察

遺産分割案検討と並行して配偶者の相続時の相続税の試算を行った。
●配偶者独自の財産はほとんど無い為、今回相続した財産が主な財産となる。
●田畑だけなら基礎控除額を下回るので相続税の心配は無い為、仮に現預金を使い切ってしまえば相続税の心配は全く無い事になる。
●配偶者は元気で友人たちと旅行に行くなどしているし、医療費・介護費用等で現預金が大きく減少する可能性もある。
●仮に現預金がそのまま残ったとしても、現金があるので相続税の支払いに困る事はない。
●配偶者が今後楽しく余生を生きてほしい・親のカネだから親が全部使えばいい、という子供3人の総意。
上記のポイントを踏まえて、遺産分割協議が決定した。

支払う相続税

配偶者:537.8万円→配偶者の税額軽減を適用し、0円。
同居の子ども:62.2万円 合計:62.2万円

弊社への報酬

764,000円(遺産分割協議書は司法書士さんが作成)

円滑に進めるために気を付けたポイント

遺産分割について伺いましたら、みなさん「配偶者の希望通りに」という回答でした。
そこで、配偶者のお考えを最優先にしようという方針を共有しました。
遺産の把握と精査を進めつつ、配偶者のお考えを伺い、それに基づき相続税シュミレーションを行ったところ、相続税は今回、二次相続ともに驚くほど少なかったようです。金融機関等から500万~1千万円は支払う事になると言われていたようです。
相続税節税のために遺産分割を考える事は全く無かったのですが、結果的に相続税を抑え、円満相続と配偶者の生活保障が実現しました。

遺産総額3億5千万円のDさんの場合

遺産の内容

自宅敷地:5000万円(150坪)
自宅建物:1500万円
現預金:5000万円
生命保険金:3000万円
収益不動産:1億8500万円(アパート、テナント、駐車場などを所有)

家族構成

配偶者と子ども3人。子ども3人は県外に居を構えている。

背景

代々農家の家。現在は農家をしておらず、会社勤め。田畑を宅地化し収益不動産を建築した。
亡くなった方のご両親が建築したので築年数が経過しており、建築時の借入金は繰上返済して完済。
特別な相続税対策をしていないが、生命保険金は1000万円ずつ子どもを受取人に指定し相続税納税資金に充てる。

遺産分割

子どもが家を離れて暮らしているので、自宅は配偶者が相続する事に決定。
現預金は今後の生活資金として配偶者が相続する事で決定。
全遺産を配偶者にという意見が子どもから出たが、配偶者から自分が生きている間の今回の相続で収益不動産を子ども達に移したい、遺言では私の相続の時に子ども達が揉めるかもしれないから今回の相続で確定させておきたい、私が言えば子ども達は納得する、という意向があり、配偶者の采配で収益不動産を子ども達が相続する事になった。
※子ども達は離れて暮らしているので、普段は電話、メール、スカイプで打ち合わせを行った。お盆など相続人全員が集まる時には全員の前で私が納税シュミレーションなどを説明しました。

支払う相続税

子ども達合計:4,264万円
配偶者:1925万円→配偶者の税額軽減で相続税は0円に
合計:4264万円
※納税は生命保険金を充て、弊社から打診をして建築資金を借りていた金融機関から借入を行った。家賃で十分返済可能であった。無事、期限までに相続税の支払いを終えた。

弊社への報酬

2,212,000円(複雑な土地評価による加算あり、土地は5区画あり全て路線価評価)

円滑に進めるために気を付けたポイント

お母さんは他家庭での相続の揉め事を実際に見てきたそうで、生前から御夫婦でこんな事になってはいけない、と話をされてきたそうです。
そこで、どうしても今回の相続で収益不動産を子ども達に移したい、という御希望となり、お母さんの采配で「このアパートはOOが相続する」と分割内容が決まっていきました。
しかし、お子さん達は相続税を支払うだけの財力に不安を感じており、借入をして相続税を支払った後の返済を心配していました。
そこで、相続税の試算を行い、各子どもが負担する税額を計算し、生命保険金と銀行借入で支払った場合の返済シュミレーションをご説明しました。
お子さん達と弊社との基本はメールですが、細部は電話やスカイプでお伝えし、返済にゆとりがある事を御理解頂きました。
結果、亡くなった御主人と配偶者の思いが実現する遺産分割となりました。