結論は売掛債権等に該当しないと思われるため、対象外と考えます。

理由は以下のとおり(私見です)。

 

問題の所在(問題というほどでもないけど・・)

予定納税で支払う消費税は、あくまでも「仮払い」で国に支払う事が確定しているものではありません。
当期末の決算で当期に支払う消費税を確定させて、支払不足があれば支払い、支払い過ぎであれば払い過ぎの部分が還付されます。

予定納税した消費税や法人税が還付される事は実務で良くあります。

還付される税金は「未収金」や「未収入金」または「未収還付法人税等」なんていう勘定科目で処理することが一般的かと思います。

 

未収金だから、貸倒引当金の対象か?

条文を検討してみました。貸倒引当金が規定されているのは、法人税法52条2項です。
※1項は個別評価です。個別評価は破産申立など法的事由が生じている場合に用います。日本国が破産を裁判所に申し立てるという事はあまりないと思うので消費税の還付金は2項に該当すると思われます。

 

52条2項は以下のとおり定められています。

 

・・・内国法人が、その有する売掛金、貸付金その他これらに準ずる金銭債権(個別評価金銭債権を除く。以下この条において「一括評価金銭債権」という。)の貸倒れによる損失の見込額として・・・

 

一括評価金銭債権が貸倒引当金の設定対象となり、一括評価金銭債権とは

・売掛金
・貸付金
・その他これらに準ずる金銭債権(個別評価金銭債権を除く)

と定められています。

還付消費税や還付法人税は売掛金でもないし、貸付金にも該当しそうにありません。

 

では、「その他これらに準ずる金銭債権」とは何か?
法人税法基本通達11-2-6に規定があります。

 

法第52条第2項《貸倒引当金》に規定する「その他これらに準ずる金銭債権」には、次のような債権が含まれる。

(1) 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等又は貸付金の未収利子で、益金の額に算入されたもの

(2)以降は省略。

 

未収金は貸倒引当金の設定対象となりますが「益金の額に算入されたもの」という限定がかかっています。消費税の還付金や法人税等の還付金は益金にはなりません。なので、この通達には該当しません。

これにより「その他これらに準ずる金銭債権」には該当しないと考えられます。

 

消費税の精算仕訳の時にでてくる雑収入は益金なので、雑収入に計上した部分は「その他これらに準ずる金銭債権」ではないか?という疑問もわきます。

この端数は期中の仕訳の仮払消費税や仮受消費税の円未満の端数処理の積み重ねや、納付する際に百円未満の端数を切り捨てることによって生じたものと考えられます。計算上の差額や納税が猶予された部分(仕訳で言うと「未払消費税等」が減額した部分)であるため、予定納税した消費税が益金に参入されたという事はできないと考えます。

 

以上により、還付消費税や還付法人税は貸倒引当金の設定対象とはならないと考えます。