「名義変更と相続税申告と、どちらを先に行えばいいでしょう」という御質問を多く頂きます。

その前に名義変更と遺産分割協議の違いをご説明いたします。
遺産分割協議は、「どの遺産」を「誰が」相続するかを相続人で相談して決める話し合いです。遺産分割協議でまとまった遺産分割案を書類にまとめたものが遺産分割協議書です。
名義変更は遺産分割協議書に基づいて行われます。従いまして、遺産分割協議はかならず名義変更に先行して行われ、遺産分割協議がまとまらなければ名義変更もできません。

また、相続税申告書の必須添付書類の1つに遺産分割協議書が含まれております。遺産分割協議がまとまらないと、実は相続税申告もできない事となります。

従いまして、名義変更と相続税申告の前に遺産分割協議をまとめる、という事がかならず必要です。

 

名義変更と相続税申告の順番は法律で決まっておりません。どちらを先に行っても良いことになります。

弊社では、名義変更を先に行って頂く事をお勧めしております。理由は書類取得の手間と費用が省けるからです。

名義変更には遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書が必要です。
銀行など預金、土地・建物の不動産の名義を変える際はこれらの書類を求められます。銀行など金融機関も土地・建物の名義変更登記を行う法務局も、名義変更が済めば書類は全て返却してくれます。

一方、相続税申告書にも遺産分割協議書、戸籍謄本、印鑑証明書を添付しなければなりません。そして、税務署に提出すると、これらの書類は戻ってきません。

 

従いまして、名義変更→相続税申告の順番で行うと、戸籍謄本、印鑑証明書を重複してお取り頂く必要がなく、ざっくり申し上げますと「使い回し」ができます。

戸籍謄本は亡くなった方の出生から亡くなる時までが必要で手数料は高額になり、時間もかかります。
名義変更を先にして頂き、最後に返却されてきた戸籍謄本と印鑑証明書を税務署に提出しますと、少ない通数で無駄なく手続きが完了します。少なくとも「税務署用」にわざわざお取り頂く必要はありません。

 

相続税申告期限までの残された時間などにより、全ての方が名義変更→相続税申告の順番通りに出来る訳ではありませんが、時間がある方はじっくりと順番通りにやられても良いと思います。