「一番いい遺産分割の仕方を教えてほしい」と、言われます。
「一番いい」と言うのは、かなり難題です。
何を持って「一番いい」とするのかも難しいです。
そもそも、その分割案が一番いいという事を決める人は誰なのでしょうか?
1つの指針
結論から言えば、一番いい遺産分割は「円満相続」の遺産分割です。
「です」と断定しましたが、私はそう思っていますし
実際に御相談されれば、そのようにお伝えしています。
さらに言えば、「円満相続」が満たされれば、他はどうでもいいと考えています。
実際に相続の揉め事に相対すると、その気持ちは高まります。
円満相続になる分割で支払わなきゃならない相続税があるなら
払えばいい、と考えています。
まず、円満相続。それ以外の事は付随事項です。
円満相続かどうかは誰が決めるのでしょうか?
それは遺族の方々です。
だから、私には分かりません。
その家族が相続を迎えるまでには、それこそ何十年もの時の積み重ねがあります。
その全てが凝縮されているのですから、当事者にしか分かりません。
そう考えると、「一番いい遺産分割は?」と当事者の相続人が
第三者の税理士に聞くのは、極端に言えば筋違いかもしれません。
相続を何度も経験し、遺産分割の酸いも甘いも知り尽くしている相続人は
そうそういません。ほとんどの方が初めてか2回目です。
なので、第三者で一応専門家とされている税理士に
自分たちが考えた分割案で本当に良いのか、確認したいのだと思います。
繰り返しますが、遺産分割で大切な事は「円満相続」です。
なので、ご自分たちで「これでうちは円満だ」とみんなで同意すれば
それがベストで最高で、唯一の遺産分割です。
ご自分たちを信じて下さい。
遺留分・遺言は必要?
遺言を書くことを勧めたり、遺産分割には遺留分を考えなきゃいけない、とか
言ったりする専門家がいます。弁護士さんとかに多いのでしょうか。偏見です。
ご自分の意思をはっきりと伝えたい方や、遺言が必要な状況の方は
遺言を残される事をお勧めします。本当に有効な場面があります。
現在、遺言は「相続は揉める。だから揉め事回避」が目的という
文脈で説明されたり、書かれたりする事が多いように感じます。
しかし、揉め事回避の為に遺言を書かなきゃいけない人や
他の相続人からの遺留分減殺請求に備えて遺言を用意しなきゃ
ならない人や家族が、私は幸せな人・家族には思えません。
弁護士のクライアントがいますが、彼が手がける相続案件は
揉めているものばかりです。
揉めて揉めて、どうしようもなくなったり、最初からケンカするつもりで
弁護士に依頼をしているのです。
だから、弁護士は相続を揉め事と解釈しているように思います。(偏見です)
しかし、税理士同志で話をすると、揉めて弁護士沙汰になっているような
相続案件は、ほとんどありません。
私の周りの税理士には、そういうややこしい敬遠したい案件が来ない
だけかもしれませんが、みんな全然無いそうです。
なので、私は、遺産分割はほとんど揉めないと思っています。
多少の考えの違いや思い違いはありますけど
兄弟や親子ですから、意見の食い違いは過去にもあったでしょう。
そして、それを乗り越えてきて今があるはずです。
だから、ほとんどの方は遺留分の事を考える必要もないと思います。
遺言だって、どうかと思います。
生前に、ご自分の意思や考えを子供たちが揃っているところで
伝えればいかがでしょうか?
子供たちは、あなたの意思を汲んでくれるのでは無いでしょうか?
公正証書遺言や自筆証書遺言でなくても、直筆のメモ書きで十分で無いでしょうか?
遺産分割とは、つまり、今までどうやって子育てをしてきたのか?
親と子供の関係性、子供間の関係性が問われている問題なのです。
それを、たった数枚の紙切れや知恵で何とかしようという方が筋違いのように思います。
これは私が楽観的で一面的な見方しかしていないからかもしれません。
でも、それでいいと思っています。
私は家族は揉めるものだと考えていませんし、そういう家庭を作りたくもありません。
私が死んだときは子供たちが譲り合い、その時の状況に応じた最適解を
導き出してくれるような子育てをしていきたい、そう思います。