「行方不明」と言っても、山で遭難したというのではなく
諸々の事情により現在は音信不通で居所が分からず、連絡が取れない。
今、どうしているか把握している者も周りにおらず、SNSにも表示されない。
そのため、どう頑張っても連絡を取ることができない時のことです。
(※ご参考:本籍地で調べれば、現住所は分かります。)
また、過去の諸々の事情により連絡を取ることがしたくない
遺産の内容を知られたくない、遺産を相続させたくない
親や自分、自分の親族の葬式や法事に呼ぶつもりは全く無く
断絶した関係を継続したい、という事情の場合も含まれます。
行方不明者がいる場合の遺産分割協議
遺言がないまま相続が起こると、遺産分割協議を相続人の全員で行うことになります。
しかし、行方不明の相続人がいた場合、「全員」で行う事は不可能なため
遺産分割協議を完了させることはできません。
遺産分割協議が行われないと、土地・建物の名義変更登記ができません。
親の住宅を売却しようにも売却できないということになります。
預貯金の処分も難しくなってきます。
相続人の全員が揃わないと、手続き上の不都合が生じてきます。
行方不明の相続人がいる場合の手続きは2つに分かれます。
1、失踪宣告
2、不在者財産管理人の選任
のどちらかを行います。
1、失踪宣告
失踪宣告は、山で遭難したときのように、7年以上生死不明の場合に申し立てます。
申し立てを行い受理されると、行方不明者は法律上は亡くなったこととして扱われます。
申立から受理されるまで、おおむね1年間です。
2、不在者財産管理人
不在者財産管理人は、行方不明者の代理人です。
勝手に兄弟がなることはできず、家庭裁判所に申し立てを行い、選任してもらいます。
申立から選任まで1か月から3か月くらいかかるようです。
ただし、不在者財産管理人は財産を管理するだけの存在なので
このままでは遺産分割協議に参加することはできません。
そのため、不在者財産管理人の選任と同時に「不在者財産管理人の権限外行為許可」の
申立を行って、遺産分割協議に参加できる許可を与えてもらいます。
これにより、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加できることとなります。
しかし、遺産分割協議は裁判所の下で行われ、裁判所は行方不明者に不利益があるような
遺産分割は認めない傾向があるようです。
具体的には、行方不明者の法定相続分を下回る内容は不利益があるため
認めない、というものです。
※不在者財産管理人を交えた遺産分割の流れ・実務は
弁護士さん、司法書士さんが詳しい解説をしています。
「不在者財産管理人 遺産分割」で検索してみてください。
公正証書遺言がお勧め
このように行方不明者がいる場合、手続きが面倒です。
その為、遺言を書くことで、例えば特定の1人に全てを相続させることが可能です。
(遺言の執行人も同じ人にしておくといいと思います。)
この場合の遺言は公正証書遺言がお勧めです。
この内容の遺言があれば、遺産分割協議を行うことなく遺産の名義変更ができます。
遺言の執行人だけで事務的な諸手続きを行う事が可能となります。